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【書き起こし:前編】競争環境の変化に伴う組織のあるべき進化とは 〜今取り組むべきエンゲージメント経営〜

本記事は、株式会社アトラエの代表取締役である新居 佳英が、大手企業の経営者や人事役員、働き方改革の推進担当者の方々向けにお話しさせていただいたとある講演内容の書き起こしを元に作成しています。

昨今"エンゲージメント"という言葉が働き方改革や組織づくりの文脈で多く語られています。それを受けて、本記事では競争環境の変化に伴う組織のあるべき進化、今取り組むべきエンゲージメント経営とは何か?について詳しく書いていきたいと思います。


現在の日本は”特殊な状況”に置かれている

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多少前後ありますが、1995年以降の日本のGDPは基本的には横ばいです。高度経済成長期が終わりを迎えた今、日本はGDPが伸びていないという状況に直面しています。

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また、それとともにアメリカの調査会社によるランキングでは、仕事への熱意度、これは「働きがい」と言ってもいいかもしれませんが、この順位が139カ国中132位と、先進国としては、かなり低い結果。日本は、働きがいがない国、働くことに対して熱意のない国というような言われ方をされるようにまでなってきました。

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さらには、生産性という指標については、先進国のなかでは最下位。日本は残念ながら、非常に生産性の低い国と言わざるを得ない状況です。
こんな状況が続いてきているのが現在の日本なのです。

なぜ、日本がこのような状況に直面しているのか?

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前提、高度経済成長期から昭和終期にかけて日本はとてつもない成長をしてきました。これを支えてきたのは、重厚長大産業を中心とした、世界を代表する日本企業です。この期間は、主に拡大再生産による成長を続けていました。

また、それに伴う日本独自の終身雇用制度年功序列型の組織形態が、当時の日本の時代的な背景や経済環境に非常にマッチしたということもあって、日本企業は終戦後からとてつもないスピードで、右肩上がりの成長をしてきました。

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一方で、1995年くらいから、競争環境が大きく変化します。経済に対して非常に大きなファクターだと言われている生産年齢人口ですが、この生産年齢人口がちょうど1995年をピークとして、下がっていくというトレンドに変わっています。また、ほぼ同じタイミングである1995年前後からインターネットの商用利用も始まり、ビジネスの競争環境が大きく変化していきました。

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今までは、同業界同業種の会社がライバルでした。仮に自社が銀行であればライバルになり得るのも銀行であったという風に戦ってきたわけですけれども、時代の変化によって、銀行だけではなく、それ以外のIT企業や、ブロックチェーンを活用した新しい事業体、ないしはキャッスレスの新しい支払いを生み出す企業など、色々なものが銀行にとって、もしくは金融機関全体にとってのライバルになってきています。

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金融業界だけではなく、自動車メーカーを例にとっても同じようなことが言えます。今まで自動車メーカーは自動車メーカー同士、既存の競合企業だけと出荷台数や製造台数を戦ってきたわけですが、今ではまた違う領域での勝負が必要になっています。これからは自動運転、カーシェア、ライドシェア、レンタカー、色んなビジネスと戦っていかなければなりません。

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ビジネスにおける競争優位の因子は変わりつつあるため、時代の変化に合わせて、我々の考え方や行動も変化させる必要がでてきました。

当時、日本が伸びてきた経済成長の時代においては、オペレーショナルエクセレンスと呼ばれる、ミスを最小化して効率的に物事を実行していくことや、マニュアルにきっちり沿っていることが重要とされていました。これは非常に日本の国民性ないしは、勤勉な日本人の性質にマッチしていたのかもしれません。

ただし、現代の競争環境においては、オペレーショナルエクセレンスだけではなくて、さらにクリエイティビティとか、アイディア革新性のようなものをしっかりと発揮していかなければなりません。

また、クリエイティビティや、アイディア、革新性、創造性を発揮していくためには、ミスを許容し挑戦や変化を続ける、そういった考え方や行動が必要になってくるということ。これが大きく変わったところだと思います。

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そのように仕事が変わってきたことによって、働く人たちにも求められる素質やスキルが変わってきました。

農耕時代においては、当然ながら畑を耕すタフさ、力や意欲、朝早く起きられるかどうか、そんなことが求められてきたわけですけれども、工場時代になってくると、字が読めたりマニュアルが理解できたり、しっかりとミスなく作業できるかどうかということが求められます。

次のオフィス時代では、パソコンを前にしてオフィスで働くようになり、字が読めて指示通りに作業ができることだけではなく、日々のコミュニケーションや、分析や提案という能力が求められるようになってきました。

もう一つ時代が進み思考時代と定義しておりますが、ここでは高い専門性や新しい価値、そういったものを認知したり創造することができるようになっていかないとなかなか活躍する場が得られません。

当然ながら、時代ごとの背景において、活躍できる人のスキルセットは変わりますが、現代が、この世の中で活躍できる人のスキルセットが大きく変わっていく時代なのかもしれません。加えて、農耕時代から工場時代への変化とは違い、なかなかその変化が実感しづらいタイミングになってきています。

なので、なぜうまくいかないのかがよくわからないということに、日本の多くのビジネスパーソンが直面しているのではないでしょうか。

高度経済成長期にとてつもない成長を遂げたこと、この成長があまりにも偉大すぎ、類を見ない大きな成長だったこと、これこそが、人々が変化を受け入れる邪魔をし、日本を今の危機に直面させている一番の背景なのかもしれません。

時代の変化に対して求められている組織の進化とは

上記のような背景を踏まえると、これからの時代に必要とされる素質やスキルを活かせる組織に変わらない限り、社会の進化から取り残される可能性が高まります。組織として何をすべきか全員で考え、高い専門性を個々人が磨いていく、そんな組織に変わっていかない限り生き残れないという時代に突入しているのです。

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今までの日本企業は、明確な労使関係(資本家が資本を出し、労働者が労働力を提供するという関係)が当たり前でした。ただ、これからは創造性や革新性を発揮しないと生き残っていけません。工場時代からオフィス時代、さらに思考時代においては、この明確な労使関係というのは、すでに古くなっていると感じています。

同じ目的や志を持つ仲間として組織を運営していく必要があるでしょう。

誰かが誰かを使う時代ではなく、知恵を絞りながらみんなでチームとして価値ある目標を実現していく時代になってくるのではないでしょうか。

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これからはビジョンやミッションといった価値のある目標を中心に掲げ、そこに共感した人たちが自立自主的に集まりチームを作り上げる、そんな新しい会社の成り立ちが重要なのだろうと思います。

この中心にいるのが正社員、少し遠くに業務委託の方々や派遣社員、外部顧問や嘱託など、多種多様な働き方(雇用形態)の人が一つの旗のもとビジョンを実現するために集まってできるチーム、これがこれからの"会社"となってくるのではないでしょうか。

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また、今までは上意下達の組織形態ピラミッド型の組織形態が最も効率的だろうという風に言われてきました。これは、元々は軍隊の仕組みからきている組織づくりですが、実は今の時代においてはかなりスピードが落ちる要因の一つになっています。この組織でいうところの上までエスカレーションしている間にも刻々とマーケットは変化し、競合が既に動いているというようこともあるわけです。最近私は、クリエイティビティや創造性、イノベーション、そういったものを発揮するには自由闊達で自律分散型の組織形態を作っていくべきではないかと思っています。現場現場で、それなりの裁量をもって判断して、自分たちの頭で考えたものをしっかりと実行していく、そんな組織形態がこれからの時代は求められていくと考えます。

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まとめると、この平成の30年間は下記のような時代であったのだろうと思います。

・高度経済成長期という特殊な経済環境で上手くいきすぎた
・当時の働き方、組織の考え方を完全に引きずっている

上記背景もあり、現代の企業やその経営者は、従業員の働きがいや、生産性をあげていくことに関し、基本的にはあまり得意ではないというのが、今の日本が直面している結果なのではないでしょうか。

一方、働く人たちは「会社にいれば大丈夫」「終身雇用である」ということを考え、基本的には今年より来年、来年より再来年と、どんどんどんどん給与が上がり、出世していくことを前提に働き続けています。

会社に依存し、自らの市場価値やビジョンやミッションを強く意識することなく、労働や貢献の対価として給与を貰うことが働くことの目的と化している。これが高度経済成長期に日本が陥ったことなのだろうと感じています。

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これからは、従業員の働きがいを高め、クリエイティビティやアイディアを活かして変化に対応していく、これがあらゆる業界・業種、あらゆる会社や組織に求められることとなるでしょう。

そしてクリエイティビティやアイディアを活かして変化に対応していくということは、まさにエンゲージメントと言われる、社員の自主的貢献意欲、我々はエンゲージメントを社員の自主的貢献意欲と訳していますが、その社員の自主的貢献意欲の高い組織を作っていくことが、もっとも重要な組織づくりの肝だろうと考えています。

昨今話題のエンゲージメントとは

昨今、日経新聞をはじめとする多くのメディアや、経済産業省や厚生労働省が発表する資料の中にもエンゲージメントという言葉が出てくるようになりましたが、まだまだエンゲージメントという言葉独り歩きしているように感じます。

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まずエンゲージメントというのは、画像のように2種類の学術的な理論に基づいてつくられてきたものです。一つはユトレヒト大学を発祥としたワーク・エンゲージメント、仕事との関係性です。もう一つは、ボストン大学の教授が最初に提唱した、従業員エンゲージメント、エンプロイーエンゲージメントというものですが、我々はこの二つを併せて、エンゲージメントと考えるのが一番妥当だろうという風に考えています。このワークエンゲージメントと従業員エンゲージメント、要は仕事との関係性と、組織やチームとの関係性のようなものを併せてエンゲージメント、自主的な貢献意欲と解釈しています。

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実際にエンゲージメントと誤解されやすい二つのファクターがあります。ここで示す「モチベーション」や「従業員満足度」と呼ばれるものと、混濁して使われていますが、実は似て非なるものです。

モチベーションは、従業員の生産性との関係は実は明確ではありません。モチベーションが上がったからといって生産性が上がるかというと、現状証明されていません。

従業員満足度は、日本企業にとってはモチベーションより馴染みが深い言葉でしょう。しかし、日本企業が実施する「従業員満足度調査(非常に長い質問が人事から送られてくる年に1回ほどの調査)」で、日本の組織が良くなっているかというと、これもあまり良くなっていませんよね。この従業員満足度調査を、エンゲージメント調査という形にして(内容は同一)配信しているケースもかなり多く見受けられます。

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従業員満足度というのは、会社が従業員に与えるものという意味合いが強い概念です。これはエンゲージメントと異なっていて、この従業員満足度調査というのは、どんなに従業員の満足度があがっても、会社のパフォーマンスとの連関性は一切証明されていません。

特に給与をあげる、オフィスの環境・社員食堂を整える、福利厚生を充実させる、などといった会社にとってのコスト要因を満たしていくと、従業員満足度が上がると言われていますが、その結果従業員のパフォーマンスが上がるというデータは、今まで一回も証明されていないというのが現実です。

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モチベーションや従業員満足度に対して、エンゲージメントというものは、会社と個人が繋がった関係性に関するスコアリングで、既に色々な大学機関、ビジネススクール、もしくは調査機関によってパフォーマンスとの関係性が明確であるということが証明されている唯一の指標です。

このエンゲージメントという指標が、世界的にも注目されているのは会社の業績、イノベーション、そういったものに明確に関係性があると言われているからです。

ギャラップというアメリカの調査会社の結果では、収益性や生産性という会社にとってポジティブな因子はエンゲージメントと完全に比例関係にあること、離職率や事故など会社にとってネガティブな因子は、エンゲージメントと相反する関係にあることがわかっています。

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また我々も企業様との共同研究の結果、受注率とエンゲージメントとの相関関係が明確にあることが、データ上証明されることがわかりました。

前編は以上です。

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