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エンゲージメントと生産性の関連について 【 wevox 研究紹介 :Atrae】 - formal ver.

wevox Data Scientist の杉山です。
この記事では、先日発表されたプレスリリースの中身について説明します。

今回の共同研究でわかったこと

先日、アトラエから2本のプレスリリースが発表されました。

それぞれ、ウイングアーク1st株式会社さん、トランスコスモス株式会社さんとアトラエの共同研究の結果を発表しています。
おおまかにいうと、「エンゲージメントが高いほうが、生産性も高い」「給料を上げることが、エンゲージメントを一部高める効果がある」ということもわかりました。

ここから先で詳細について説明します。

そもそも「エンゲージメント」とは、学術的には「ワーク・エンゲイジメント」と呼ばれるもので、日本語では「主体的朗働」と訳されます。つまり、組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組めている状態のことです。
実は、そんなに難しい概念ではありません。
みなさん、趣味なら、依頼されなくても、お金かかってもやる上、疲れるけど何故か元気になったりしますよね。これが、「趣味・エンゲイジメント」です。これの仕事版がワーク・エンゲイジメントです。要は、エンゲージメントとは、いきいき楽しく仕事してます!ということです。

ウイングアーク1st株式会社さんとの調査では、営業さんたちのチームについて調査しました。その結果、エンゲージメントが10ポイント高いチームのほうが、受注率が1.2倍であるという関係性が見つかりました。

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(プレスリリースより引用。)
(※「+10で1.2倍」という関係は、真面目にロジスティック回帰分析を実施して導いています。詳しくはプレスリリースを見てください。)

トランスコスモス株式会社さんとの調査でも、エンゲージメントと生産性の関連について調査しました。
こちらでは、エンゲージメントが10ポイント高いチームの方が、前年対比売上伸長率が1.125倍であるという関係性が見つかりました!

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加えて、昇格・昇給すると、「待遇への納得感」が5.3ポイント、「会社への共感が」2.2ポイント高まることもわかりました!

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プレスリリースより引用)
(この5要素は、「バランス分析」というもので明らかにした、エンゲージメントを支える5要素です。その記事も執筆予定です。)
こちらについては、「昇格・昇給とエンゲージメントの関連について」という記事でまとめる予定です。

本研究で重要な点

本研究の重要な点はたくさんあります!

1. 日本人に対する研究結果である
2. 厳密には相関関係だけど、結構因果関係に近い
3. 心理指標と経営指標の直接の関係を見出した
4. 売上への貢献が間接的な人でも関係を見出した

以下で、順番に説明します。

1. 日本人に対する研究結果であること

実を言うと、エンゲージメントと生産性に関係があることは、ヨーロッパでの研究で沢山明らかになっています。なので、本研究のミソは新規性ではありません。 (参考文献: [厚労省19] [Ba08] [CGS11] [HPT08] [HW08] [RLC10] [SSKK12] [XBDS09] など)
アカデミアでは、エンゲージメントと生産性の関係を本気で疑うのは主流派ではないと思います。

日本人に対する研究成果も、島津明人先生を中心としたグループで徐々に増えてきており( [SSKK12] )、これからどんどん調査を重ねていくところです。今回の発表もそんな流れの一つです。

2. 厳密には相関関係だけど、結構因果関係に近い

実は「学術的」に「因果関係」を「証明」することは非常に困難です。なので控えめに、「因果関係を示唆する相関関係」と表現してあります。
今回の場合も、「成果が上がっているから楽しくてエンゲージメントが高い」のか「エンゲージメントが高いから生産性が上がって成果が出た」のかは、判断が難しいです。
ですが、本研究の場合、エンゲージメントのスコアは、受注率や売上高伸長率を測定したタイミングより3ヶ月くらい前の物を利用しています。因果は過去から未来へしか流れないので、かなり因果関係に近い結果を出せたのではないかと自負しています。

3. 心理指標と経営指標の直接の関係を見出した

これは、2つの意味で重要です。
1つめです。エンゲージメントが高いと、意欲を持って働くので、生産性が高まるというのは、直感的には明らかだと思います。ですが、これを数値的に証明するのはとても難しいです。
なぜなら、受注率や売上高には、本人のやる気以上に圧倒的に大きな影響を与える要素が他にあるからです。なので、エンゲージメントが低いチームがガンガン売れることも十分にあるわけです。それでも統計的有意な結果が出たということは、それだけエンゲージメントの生産性への影響が大きいということなのではないかと考えています。
(ちなみに、アカデミアの先行研究では、「自分は生産性高いと思うか?」という質問に対する答えをもとに分析しているものが多いです。真の経営的な数値でやっている研究もあります( [XBDS09] )が、それは珍しいので、結構これはすごいことです。)

2つめです。この調査結果は、あなたの会社の経営レベルの意思決定にも影響を与えるものになっています。なぜなら、「受注率」や「前年対比売上伸長率」という、極めて経営的に重要な指標とエンゲージメントの関係が示されたからです。
もしあなたが、会社の生産性をアップさせたいと考える人であれば、この結果を使わない手はないでしょう!

4. 売上への貢献が間接的な人でも関係を見出した

営業さんとエンゲージメントの関係は、比較的わかりやすく、証明も容易だと思います。なぜなら、営業さんの場合、頑張ったらより売れるという関係がある程度明確ですので。
ですが、今回、エンジニアやデザイナーさんが多い広告運用チームなど、頑張りと売上の関係が間接的な人が少なくないチームついても、エンゲージメントと生産性の関係を示すことができました。これもすごいことです!
ですが、逆に考えたら、これも当たり前なのかもしれません。IT革命をはるか昔に見る、 Society 5.0 の時代ですので、エンジニアやデザイナーさんみたいなクリエイティブな人たちが、エンゲージメント高くいきいきと働いて最高の生産性を発揮するというのは、今では当たり前のことですから。(GAFAとかそうですし!)
私としては、頑張りと売上の関係が間接的であろうとも、統計的有意な結果が出てしまうほど、エンゲージメントが業績に与える影響は大きいということなのだと思っています。

今後の研究で明らかにしたいこと

本研究の長所を中心にお伝えしてきましたが、「学術研究という視点」で見ると、要改善な点はたくさんあります。

たとえば、あくまで今回の結果は相関関係であって因果関係ではありません。因果関係を学術的に証明するには、極めて慎重な実験設定と、十分なデータ量が必要になります。
ですが、常に足りないデータで頑張るのがデータサイエンティスト、研究者です。引き続き、皆さんの納得に足る研究結果を出すべく、頑張ってまいります。

また、今回の研究は、データの偏りが大きい部類であると思われます。具体的に言うと、2社のデータしか利用していないですし、どちらも IT 系の会社です。
なので、この結果が、日本のすべての人に適用できる法則であると「学術的に」断定することはできません。
一方、今までの調査では、この記事で紹介した

「日本のIT系の営業職」
「日本のIT系のエンジニア、デザイナーさんたち」

の他に、

「フィンランドの歯科医( [HPT08] )」
「アメリカの多くの職業で横断的に( [HW08] )」
「消防士( [RLC10] )」
「日本の多くの職業で横断的に( [SSKK12] )」
「ギリシャのファーストフード店スタッフ( [XBDS09] )」

、、、と、かなりの領域で示されてきています。
アカデミアは、一点の曇りもなく断言できるレベルまで断言しない文化です。ですが、ビジネス領域にいるみなさんは、これを見たらエンゲージメントは直接的な経営指標にインパクトを与えると考える方が妥当ではないかと思います。
もちろん、私たちは、引き続き研究を続けていきますので、応援していただけると嬉しいです。

終わりに

以上です。
今回の研究成果について、何となく伝わりましたでしょうか?
もしわからないことがあれば遠慮なくお申し付けください。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。

参考文献

[厚労省19] 厚生労働省 (2019) 『令和元年版 労働経済の分析』

[Ba08] Bakker, A. (2008). Building engagement in the workplace. In The peak performing organization (pp. 96-118). Routledge.

[CGS11] Christian, M. S., Garza, A. S., & Slaughter, J. E. (2011). Work engagement: A quantitative review and test of its relations with task and contextual performance. Personnel psychology, 64(1), 89-136.

[HPT08] Hakanen, J. J., Perhoniemi, R., & Toppinen-Tanner, S. (2008). Positive gain spirals at work: From job resources to work engagement, personal initiative and work-unit innovativeness. Journal of vocational behavior, 73(1), 78-91.

[HW08] Halbesleben, J. R., & Wheeler, A. R. (2008). The relative roles of engagement and embeddedness in predicting job performance and intention to leave. Work & Stress, 22(3), 242-256.

[RLC10] Rich, B. L., Lepine, J. A., & Crawford, E. R. (2010). Job engagement: Antecedents and effects on job performance. Academy of management journal, 53(3), 617-635.

[SSKK12] Shimazu, A., Schaufeli, W. B., Kubota, K., & Kawakami, N. (2012). Do workaholism and work engagement predict employee well-being and performance in opposite directions?. Industrial health, 50(4), 316-321.

[XBDS09] Xanthopoulou, D., Bakker, A. B., Demerouti, E., & Schaufeli, W. B. (2009). Work engagement and financial returns: A diary study on the role of job and personal resources. Journal of occupational and organizational psychology, 82(1), 183-200.

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